MMTを斬る
2020/07/02

MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)が近頃話題になっているようである。

この「MMT」を簡単に説明すると、「ある条件において」国はいくらでも借金(国債発行)してもよい、という考え方である。

どういうことかというと・・・
@国債とは国の借金であり、貸しているのは国民である。
A国民が貸しているのだから、国債は国民の資産である。
B国債を発行すればするほど、国民の資産は増える。
というわけである。

その国債は何に使われるかというと、主に公共事業である。
公共事業によって雇用が創出され、国民の資産が増え、GDPが増加し、国民が豊かになる、という考え方・理論である。

そんな打ち出の小槌があるならば「どんどん国債を発行して、どんどん国民の資産を増やせばいいではないか」と思ってしまうが、そうはいかない。
ダイヤモンドがそこら中に落ちていたら価値が下がるように、お金がありすぎたらその価値が下がってしまい、急激なインフレ(ハイパーインフレ)が起ってしまう。
これが「ある条件において」という部分である。

つまり、急激なインフレが起きない程度に国債をどんどん発行すればいいという理論である。

国債をどんどん発行して、消費を増やし、国民の資産を増やせば、少子化は解消され、国は豊かになる。

なんと素晴らしい理論なのか。


だがこの理論には二つの重大な欠陥がある。

まず一つ目は、「性善説」に基づいていることである。

国債の発行は誰がするのか。
それは「国=政府」である。
政府とは行政である。
行政とはつまり総理大臣をはじめとする大臣=閣僚と、官僚である。
誰か信用できる政治家・閣僚がいるのか?

前法務大臣の河井克行が己と妻の案里のために選挙資金として1億5000万円もの大金を使ったという。
これは己の私利私欲のためである。

総理大臣にいたっては、モリカケ・桜を見る会などなど、疑惑のオンパレードである。
国民のための政治家などどこに存在しようか。

政治家というのは素晴らしく頭が良い。
国民のことを考えるような「馬鹿な」政治家などいないのである。

このような者たちが国債を発行する権限を持つことになるのである。

このような政治家が碌な使い方をするわけがない。
この素晴らしい理論であるMMTをここぞとばかりに「利用」だけである。

そして行きつく先は共産主義の旧ソ連のごとくになる。


このように言うと、必ず反論する者がいる。
「そうならないように法律を作って制限すればいいではないか」と。

法律を作るのは誰か?
政治家である。
政治家が自分の首を絞めるような法律を作るわけがない。

そもそもみんながみんな法律を守っているならば、警察もいらないし、刑務所も必要ない。
裁判官も検事も弁護士も失業する。

本当の理想は、「警察官が暇な世の中」である。

ところがそんな理想とは程遠いのが現実である。


そもそも現在の日本国の借金がいくらあるのか?

『国の借金1103兆円、3月末時点 3年連続で過去最大』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44639590Q9A510C1EA4000/
である。

「国の借金は国民の資産」ではなかったのか?

国の借金が増えれば増えるほど、格差が広がっただけである。

現時点で既に国債をどんどん発行しているにもかかわらず、国は豊かになっていないではないか!
MMTの欺瞞はここに一目瞭然である。


二つ目は、「今のままであれば」という大前提に基づいていることである。
この度のコロナ禍でみんな経験したであろう。
生活必需品であるティッシュやトイレットペーパーが買えない、マスクやハンドソープが軒並み品切れ、お出かけもできない、という経験を・・・。

買うおカネがなかったのではない、買えるモノがなかったのである。

だが、これらのモノは生活していくにあたって必要なものではあるものの、「直接的」に人の命に影響するものではない。
無ければ無いで、何かで代用できるものである。


しかし、近々必ず起こる首都直下型地震と南海トラフ超巨大地震が発生したとき、MMTという素晴らしい理論は全く何の役にも立たないものとなる。

そのとき、電気・ガス・水道は止まり、物流はストップし、その結果食糧と水が消えるのである。

今回のコロナ禍どころの騒ぎではない。
食糧と水は無ければ無いで何かで代用できるというものではない。
有るか無いかで直接的に人命に影響するのである。

おカネを食べて腹を満たされるわけではない。
おカネを飲んでのどの渇きを潤せるわけでもない。
おカネを傷口に貼って怪我を治すこともできない。
おカネに乗って移動することもできない。

何もない砂漠に置き去りにされたとき、コップ1杯の水と札束ではどちらに価値があるのか。

一たび大国難が発生すれば、「今のままであれば」という大前提が一瞬で吹っ飛ぶ。

「お金がある=豊か」かもしれないが、「お金がある=幸せ」ではないのである。

MMTなどというまやかしは、所詮は禿山を緑色のペンキで塗るようなものであり、死人に化粧するようなものである。

MMTを運用する前に、まずは二つの重大な欠陥を解決しなければならない。

参考
「お金」について知ってほしいこと

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