6京円のデリバティブ
2020/07/02

6京円??
「京」って何??
何だか見たこともない単位が使われているぞ!?

1の1万倍が「1万」。
1万の1万倍が「1億」。
1億の1万倍が「1兆」。
1兆の1万倍が「京」である。

つまり「京」とは、1万の1兆倍、1億の1億倍、1兆の1万倍である。

何とも実感が湧かない単位である。

これがどれほどの数字なのかを、身近なものを使って、この数字がどれほどの大きさなのかを見てみる。

硬貨の最小単位である1円玉を使ってみよう。
1円の厚みは約1.5o。
1000枚重ねると、つまり1000円で1.5m。
1000000(100万)枚重ねると、つまり100万円で1.5km。
100000000(1億)枚重ねると、つまり1億円で150km。
1000000000000(1兆)枚重ねると、つまり1兆円で150万km。
100000000000000(100兆)枚重ねると、つまり100兆円で1.5億km。
太陽と地球との距離が約1.5億kmだから、1円玉を100兆枚重ねた厚さである。
そして10000000000000000(1京)枚重ねると、つまり1京円で150億km。

地球から太陽までの距離のざっと100倍というわけである。

ちなみに、最も遠い所に存在する人工物は1977年9月5日に打ち上げられたボイジャー1号である。
2020年3月26日現在、ボイジャー1号は地球から222億1600万km以上、太陽から222億5590万km以上離れたところにいるというから、おおよそ1.5京円分の1円玉を重ねたほどの距離である。
毎秒17037m、時速61333kmというとてつもない速度で、43年かけて進んだ距離が、約1.5京円分の1円玉を重ねたのと同じである。

6京円ともなると、900億kmの距離になる。
現在のボイジャー1号の約4倍の距離である。
それは172年かけて進む距離に匹敵する。

身近なものを使って比較してみるつもりが、とんでもないことになってしまった。

まさに「天文学的数字」である。

「6京円」という数字がどんなものなのかがわかったような、わからないような・・・。


次に「デリバティブ」とは何か?
経済学的に「デリバティブ」とは「金融派生商品」のことを言う。

わかりやすく言うと「金融商品から派生した商品」である。
それでもわかりにくい。

「金融商品」とは専門用語で「銀行、証券会社、保険会社など金融機関が提供・仲介する各種の預金、投資信託、株式、社債、公債、保険などのこと」とある。
我々が銀行に預けた「預金」や、「株」、「生命・損害保険」等々である。
この「金融商品」から「派生」した商品が「金融派生商品=デリバティブ」である。

デリバティブには大きく分けて3種類ある。
「先物取引」「オプション取引」「スワップ取引」である。
各種の細かい説明はここでは省略するが、もう少し詳しく知りたい方はこちらが参考になると思われる。
https://www.shiruporuto.jp/public/data/encyclopedia/deriv/

ここで大事なことは、「金融商品」は存在しているモノ(現物)に対して、デリバティブ(金融派生商品)は存在していないモノ(架空)であるということである。

例えば、ある銀行に預金者Aさんが現金100万円を預けたとする。
この100万円をBさんに貸し付けたとする。
すると、AさんもBさんもその銀行からそれぞれ100万円を引き出すことができるようになる。
そうすると、AさんとBさん合わせて200万円をその銀行から引き出すことができるようになる。

つまりその銀行には現金100万円しかないのに、200万円持っているということになる。
これを「信用創造」という。
「必ず返してくれる」という「信用」によって「創造(作られた)」されたお金である。
信用創造によって100万円が200万円になった(架空の100万円が作られた)ということである。

このように「信用創造」によって増えたお金は何に使われるのかというと、株式、債券、預貯金・ローン、外国為替などといった「金融商品」に投資されるのである。

ただし、「金融商品」は必ず「変動」がある。
半年後や1年後にその金融商品が値上がりしているか値下がりしているかはわからない。
もし100万円で買った「金融商品」が、半年後に150万円に「値上がり」しているとしたら、50万円の「儲け」となる。
そこで、半年後に値上がりすると予想して、半年後にその金融商品を100万円で『必ず』買う約束をする。

もし半年後に本当に150万円に値上がりしたとしたら、値上がりした50万円が「儲け」となる。

しかし予想に反して「値下がり」して50万円になってしまったとしても、半年後には約束した「金融商品」を100万円で『必ず』買わなければならない。
この場合、50万の「損」をしたことになる。

これがデリバティブの一つ、「先物取引」である。


2つ目の「オプション取引」について説明してみる。
先ほどの例と同じように、100万円の金融商品が半年後には150万円になると予想できるものとする。
ただ「先物取引」と異なる点は、「必ず」買わないといけないというものではない。
その「金融商品」を「買うことができる【権利】」を「買う」のである。

例えば、半年後には100万円が150万円になると予想した「金融商品」を「買う権利」を1万円で買ったとする。
「買う権利」というのは、その権利を行使しようが放棄しようが自由である。

半年後に予想通りに100万円が150万になったとする。
50万円の儲けとなるから、当然「買う権利」は行使するであろう。
100万円が150万円になったのだから、50万円の儲けになるところが、先に「買う権利」を1万円で買っているので、実際の儲けは49万円となる。

しかし予想に反して100万円が50万円になってしまったとする。
「先物取引」であれば、損しようが何しようが100万円で買わなければならなかったところ、「オプション取引」では1万円で買った「買う権利」を放棄すればよいのである。
こうしてリスク回避するのである。

もう一つ「スワップ取引」というのがあるが、少しややこしいので、ここでは説明を省略させていただく。
詳しくは
https://www.shiruporuto.jp/public/data/encyclopedia/deriv/deriv401.html
を参考にしてみたらいいと思う。


ここでもう一度大事なことを言っておくが、「金融派生商品」は「架空(実体がない)」であるということである。

先の例では半年後としたが、経済学的には「半年後」などは短いスパンである。
実際には1年後、2年後、5年後、10年後、100年後などというものもある。

それはつまり、今現に目の前に存在している商品(現物)を取引しているわけではなく、将来存在しているであろう商品を取引しているのである。
だから「架空」なのである。


この「デリバティブ」という「架空の取引」総額が、世界中で6京円もあるのである。


ドイツ銀行は5500兆円のデリバティブを持っていて、「その総額は頭取にも正確に分からない」と言ってしまったことで世界中の市場は一時パニックになったことがあった。

ちなみに2008年のリーマン・ショックの際は、1000兆円が市場から消滅し、世界中の政府・金融機関・投資家等が破綻の危機に瀕した。
そのときに世界各国の金融緩和によってかろうじてその難を脱することができた。

もし今回、ドイツ銀行が破綻することようなことがあれば、金額的にリーマン・ショックの約5倍の経済危機が世界中を襲うこととなる。
しかし5500兆円というのも、「その総額は頭取にも正確に分からない」と言っているということは、実際にはこの数字の数倍・数十倍もあるのかもしれない。

当事者である頭取がわからないものが私にわかるわけがないが、先の頭取の言い分を聞けば、「5500兆円で済む話ではない」と言っていることはわかる。


その言葉をそのまま転用するならば、世界中のデリバティブが「6京円」と言われているが、もしかしたらそれ以上である可能性が高い。


2018年の世界の名目GDP総額は、約85兆ドル。
(当年の為替レートにより、USドルに換算)
https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.htmlより
日本円にして約9000兆円である。

ちなみに、GDP(国内総生産)とは、国内の生産活動による商品・サービスの産出額から原材料などの中間投入額を控除した付加価値の総額。
つまり、儲けたお金のこと。

例えば、小売店が100円で仕入れて130円で売れば、30円の儲けとなる。
GDPとは、この「儲け分」のことである。

2018年の1年間に世界中の人々が働いて儲けたお金の総額が約9000兆円に対して、世界中のデリバティブ総額が6京円というのだから、世界GDPの約7倍である。

もしこの「6京円」が吹っ飛んだとしたら、1929年の世界恐慌がかわいく見えるほどの超大恐慌になるのは間違いない。

参考
「お金」について知ってほしいこと

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